こんにちは。八王子市の行政書士 野嶌孝文(のじまたかふみ)です。
今日は婚姻の取消しについて勉強します。
1 婚姻の取消原因
(1)総論
婚姻は、民法で定められている「不適法な婚姻」があった場合には取り消すことができます。
婚姻の取消原因としては、「公益的取消原因」と「私益的取消原因」があります。
2 公益的取消し
(1)取消原因
公益的取消原因は、父母の同意を得ずにした未成年者の婚姻を除き、婚姻障害事由(婚姻が不適法な理由)がある場合です。
婚姻取消原因となる婚姻障害
①不適齢婚
②重婚
③再婚禁止期間中の婚姻
④近親婚
※父母の同意を得ずにした未成年者の婚姻は取消すことができません
(2)取消権者(取消すことができる人)
①各当事者(婚姻している二人)
②その親族
③検察官(ただし、検察官は当事者の一方が死亡した場合には取消しを請求できません。)
④重婚の場合は、当事者の配偶者(下図のBさん)も後婚を取消すことができます
<AB間の婚姻解消前にAC間で婚姻した例>
重婚当事者 ⇒AさんとCさんは自分たちの婚姻(後婚)を取消すことができる
当事者の配偶者⇒Bさんも後婚をとりけすことができる(ただし、Bさんの親族は取消権者とならない)
⑤再婚禁止期間内の婚姻の場合は、前婚の配偶者も取り消すことができます
(3)取消権の消滅
①不適齢婚の取消権の消滅
不適齢婚の場合は、婚姻適齢(男18歳、女16歳)に達した後は取消すことができなくなります。
しかし 、不適齢者は適齢に達した後でも、婚姻を認める(追認)前であれば、なお3か月は取消しを請求できます(もう一度よく考えなさい、という事です)。
②再婚禁止期間中の婚姻の取消権の消滅
再婚禁止期間中の婚姻の取消権は、前婚の解消もしくは取消しの日から6か月を経過すると消滅します(取消すことができなくなる)。また、再婚後に懐胎したときも消滅します。これは、再婚を禁止している意味がなくなるというのがその理由です。
3 私益的取消し
(1)取消原因
詐欺又は強迫によって婚姻をした場合です。婚姻する相手以外の人から詐欺又は強迫を受けた場合も含みます。
(2)取消権者
詐欺又は強迫によって婚姻をした者、すなわち詐欺・強迫された者です。
(3)取消権の消滅
取消権者が、詐欺を発見してから、あるいは強迫の恐れがなくなってから3か月を経過したときは取消権は消滅します。また、婚姻を認めた(追認)場合にも取消権は消滅します。
4 取消しの方法
婚姻の取消しは、家庭裁判所に対する訴えによってのみ行うことができます。
5 取消しの効果
(1)不遡及効
婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生じます(つまり、婚姻をした事実は失われません)。すなわち、婚姻中に生まれた子や、婚姻によって準正した(嫡出子になった)子は、嫡出子たる身分を失わず、婚姻による成年擬制(未成年者が婚姻すると成年とみなされる)の効果も失われないとされています。
(2)離婚の規定の準用
婚姻の取消しについては、民法の「離婚」の規定が準用(使用)されます。準用される規定は以下です。
①姻族関係の終了
②離婚後の子の監護
③離婚による復氏
④財産分与
⑤復氏の際の権利の承継
⑥子の氏
⑦離婚の際の親権者の決定
(3)財産の返還
婚姻が取り消された場合には、婚姻によって得た財産は返還しなければなりません。つまり、財産に関する事柄は婚姻した時にさかのぼって考えます。返還の範囲については、取消原因について知っていたにもかかわらず婚姻したのか、あるいは知らずに婚姻したのか、によって区別されます。
①善意(取消原因を知らずに婚姻した)の場合
現状で利益がある範囲で返還する義務を負います。
②悪意(取消原因を知っていたにもかかわらず婚姻した)の場合
婚姻によって得た利益の全部を返還し、なお、相手方が善意であるときは、損害の賠償をしなければなりません。
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